『八王子の月見草』 第9草[2006年11月20日]
第9草 ”過去”
明美は傷を見せながら、
「あなたが幸せになるのは許せない!
この傷で私はあれから恋もできないのよ!」
「ごめんなさい・・・でもあれはあなたが・・・」
「は~!?正当防衛だとでも言いたいわけ?
ま~100歩下がってそれでもいいわ。
でも、これは一生取れない傷跡なのよ!
そして心の傷も!」
「明美さん・・・私にどうしろと・・・?」
「私と同じ運命を味あわせてやるわ!」
そう言うと、明美はそばにあった花瓶を持って殴り掛かろうとした!
それをひらりとかわした小夜子は、
「明美さん!また同じ過ちを繰り返す気なの!?」
「うるさいっ!」
明美の花瓶を持った手を小夜子が押さえもつれている。
その時!
「ただいま~、ママ~何してるの~!?」
それは、小夜子の小学校3年生の子供の葵(アオイ)であった。
花瓶はその場に落ちて割れ、
明美はすごい形相で驚きその場から走り去っていった。
「ママ!?どうしたの!?あの人誰!?」
「な・何でもないわ・・ごめんね、ビックリさせちゃって。」
キョトンとしていた葵に小夜子はひざまずいて抱きつき、
「ごめんね、葵・・・いつも一人ぼっちにして。悪いママだね・・」
何があったのか分からない葵は、笑顔で小夜子に言った。
「ううん、アオイは全然平気だよ!ママ!だから元気だしてね!」
小夜子は目から涙が溢れだいていた。
「ありがと。葵の笑顔を見ると本当にほっとするよ。」
「アオイもママの顔を見ると元気が出てくるよ!
でも怒った顔は嫌い。悲しい顔はもっと嫌い!だからね・・・」
「・・・うん、ごめんね。
ママね~昔、月見草みたいだねって言われたことがあるの。
言われたその時はわからなかったけど、
後でその意味がわかったの。
でも、葵には月見草じゃなく向日葵(ヒマワリ)みたいに
明るくいつも元気でいて欲しいから、
その字をとって、『あ・お・い』って名前をつけたの。」
「ふ~ん・・・そうなんだ~・・・」
「それと葵・・・いままで葵の存在を倉橋さんに内緒にしていてごめんね。
「うん。アオイは大丈夫だよ。
だってほら小学生の子供がいるなんて聞いたら、
みんな男は逃げちゃうじゃん!わかってるよ、ママ。」
「ごめんね。ありがとね。葵はママの子で本当に良かった!」
「ほら!ママ!出かけるんでしょ!」
時計をみると、もう昼12時だった。
受話器は外れたままで、
もしかしたら倉橋から電話があったかもと思いながら、
「大変!大遅刻!急がなきゃ!
それと葵、明日はママと一緒にどこか買い物行こうね!」
「は~い!約束だよ!
行ってらっしゃ~い、ママ!!気をつけてね~!」
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倉橋は心配になっていた。2時間も過ぎても小夜子は来ない。
電話をしてもずっと話し中で、
小夜子の家も行きたくても
まだ行った事はないのでどこにあるかわからなかった。
倉橋にはどうする事も出来ず、ただ待っているだけだった・・・
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「ハッ、ハッ、まだ、いるかな~倉橋さん。
もうすぐ着くから、あと少しだけ待っててね!」
慌てて家を飛び出した小夜子は無我夢中で走った。
周りも気にせずひたすら走った。
まだこの近くに明美が潜んでいるとは知らずに・・・
つづく・・・
『八王子の月見草』はフィクションであり、物語に登場する人物、団体、場所等は実際のものとは一切関係ありません。





