『八王子の月見草』 第8草[2006年09月08日]
『八王子の月見草』はフィクションであり、登場する人物等は実際のものではありません。
第8草 ”傷”
「そう。・・・明美・・・小夜子さん!
あなたまた幸せになろうとしてるわね!?」
「えっ!?」
「私、知ってるんだからね!
この前クラセオにいたでしょ!?奥のテーブルに私、居たわ・・」
確かに小夜子は倉橋と一緒にその店にいた。
まさか明美がいたとは思いもよらなかった。
昔、小夜子と明美は同じ会社の同僚で、
その会社の総務の石山課長を取り合っていた仲だったのだ。
しかし、明美はふられ、小夜子と男が付き合うことになったのだ。
「明美さん・・あの時はごめんなさい。でも、私も本気だったのよ!」
「あなたも知っていたはずよ。
私と石山課長が深い関係だったってことを・・・それなのにどうして!?」
「どうしてって・・!?」
すると突然、バタンッ!と玄関の開いた音がした。
そこには明美がこの頃はまだ珍しい携帯電話を持って立っていた。
おもむろに小夜子の方に近づくと、
自分の着ているブラウスを引き裂き、それを見せた・・・
「見て!あの時の傷よ!この傷と一緒で・・・
あなたへの恨みは一生消えないわ!そして心の傷も一生・・・・」
それは昔、明美の家に小夜子が呼ばれ、
石山のことで話し合うことになった日のことである。
話し合いがもつれ口論となり、
カッとなった明美は台所にあった包丁をもって小夜子を刺そうとした。
だが、うまくかわした小夜子は
逆にその包丁を明美の胸に刺してしまったのである。
まさに一瞬の出来事であった。
命は助かったが、左胸の傷跡は消えなかった。
しかし、その次の日からは明美は会社にも来ず、
家も引越して行方が分からなくなっていた・・・
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・・・まだその頃、倉橋は八王子駅で待っていた。
「遅いな~小夜子のやつ。また、遅刻か~」
約束の時間から既に一時間経っていた。
「そろそろ電話でもするか~・・・」
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つづく・・・





