『八王子の月見草』 第6草[2006年08月25日]
第6草 ”プレゼント”
倉橋と小夜子の二人はほろ酔いでクラセオを出た。
時間は22:00、大人の二人にしてはまだ早い時間だ。
こう見えて倉橋は奥手だ。
この歳になって初めて付き合うことになった女性が小夜子だった。
二人はしばらく歩いていた。
スクエアビルの入り口で、
入ろうと思ったわけではないがふと倉橋が足を止めた。
「小夜子、俺たちそろそろ・・」
「ん?そろそろ何?」
小夜子は倉橋の目をじっと見つめた。
「けっ・・けっ・・・けっこ・・」
声が裏返りそうになりながら、
そう言おうとした時、小夜子の人差し指が倉橋の口元に触れた。
「ちょっと~!ちょっと、ちょっと!
それ言うならもっとロマンチックなところで言ってよね~」
「あああ・・ごめん、ごめん・・今日はクリスマスだもんな~、
ああ、もうちょっと歩こうか・・」
「え~もう疲れた~もう一軒行こう!」
「ああ・・そうだな・・」
二人は今度、クリスマスだというのに客が
他に1組しかいない小さなフレンチバーに入った。
そこの店はどうやらマスター一人で営業しているようだった。
カウンターで奥でグラスを拭いているマスターは
どこかのドラマに出てくるような感じだった。
二人はカウンターに座り、
倉橋はジントニック、小夜子はファジーネーブルを頼んだ。
乾杯をする前に、
さっきの続きと言わんばかりにポケットからプレゼントを取り出した。
「結婚しよう・・・!ずっと、ずーっと、俺のそばにいて欲しい!」
それは綺麗に輝いているダイヤモンドの指輪だった。
「う・うん・・私、幸せになれるかな?」
「俺が一生、命をかけて幸せにしてやるよ・・!」
「ありがとう・・嬉しい・・」
小夜子はそう言うと、目に涙を浮かべ微笑んでいた。
実はこの時、
小夜子は付き合ってからずっと倉橋に秘密にしていたことがあり、
その秘密をこの次に会った時、打ち明けようと決心していた・・・
つづく・・・





